自然に近い素材をより身近に、眼にも楽しく癒されて欲しい思いで制作しています。NANでは檜を取り扱います。世の中に魅力ある木材はたくさんあります。国、地域ごとにたくさん。その中でふと、今、私が、この地で、使うなら何がいいだろう、と考える機会がありました。私からみた檜は、白く柔らい凛とした生い立ち、強さの中にある儚さ、いろいろな素材を内包し調和しうる広さ。様々な点で私を魅了し、表現していきたいと思わせてくれました。檜ならびに針葉樹はcheapに見られたりもしますが、そうなってしまううちは私の未熟さからと思います。
1つの材から生まれる多様性を視覚化し、共有したい。そんな思いで制作しています。少しずつ、可能性を探りながら作り上げていきたいと思います。



渋器

<CONCEPT>
 柿合塗は通常広葉樹に適しており、針葉樹には使われなかった技法であるようです。おそらく強度や歪み等の恐れからだと推測できます.しかし、私はこの技法に檜を使いたいと思いました。それが木理や良さを引きだすように個人的に思えたからです。

 柿渋に松煙を混ぜて下地とします。漆下地に比べて材料費が抑えられ、比較的堅牢なことから、高級品ではなく日用の器などに多く施されてきました。生渋は自然素材でありながら漆が素地に過度にしみ込むのを防ぎ、漆のりをよくし、高価かつ有限な漆の節約法でした。漆器は中世の頃から庶民にも使われており、有限かつ高価な漆を扱っていく上で庶民の間で広く確立された自然塗料のみを使った技法と言えます。京都市を主として中国地方や北陸地方等の民家では檜に柿渋、べんがら、漆、煤などを塗る風習があった歴史等も踏まえた上で、技法として失われつつある柿合塗の可能性と、山口県産檜のさらなる魅力を探りながら制作を行います。また、通常柿合塗は柿渋と松煙やベンガラを数回塗布し、漆を一度のみ上塗りするだけであり、素地は広葉樹が適していますが、NANでは檜をつかい、柿渋と松煙やベンガラを数回塗布し、漆を3-5回以上の拭き漆を行なっており、どのように仕上げたいかで変化させています。あくまでも素地の檜の良さを伝えるものであり、木工に近く現代の漆下地等を使った漆器とは別物と区別します。



TENUGUI

<CONCEPT>
古くから日本の日常に寄り添ってきた手ぬぐい。手ぬぐいの良さは色々とあります。拭う、巻く、包む、コンパクト、速乾性、etc.
手ぬぐいってどう使うの?馴染みがないからか、そんな声をたまに聞くことがあります。しかし、私は専門家でもないですし、それならどう使うかを一緒に考えるということも楽しみの一つであるのかなと思います。

<DESIGN>
 自身のイメージ、表現するカタチと図面のような印象を与えるグラフチェックとのバランスの良い融合を模索し、平面的なイメージに加え、手ぬぐいというプロダクトに落とし込んだ際に生まれる行為に着目しました。直線を用いることで、布製品ならではのくしゃっとなった際の線の揺らぎによる表情の変化だったり(アイロンを通せば直る)、手ぬぐいの薄さを活かして重ねるという行為において光を通しての透けの美しさを感じることができるのではないでしょうか。色を白黒にした理由としては、今後自身が制作として主に扱っている、柿渋、檜等を活用して染めを行いたいと考えており、どんな色も内包する黒という色を選びました。視点距離を変えたり、様々な方向に並べられたイメージが重ね方、見る方向によっていろんな見え方が生まれるような提案を心がけました。世の中には多くの魅力ある布がありますが、是非、その中の一つとしてあげられる手ぬぐいに触れる小さなきっかけになれればと思っています。